根管治療
根管治療
根管治療とは歯の根(根管)の中で細菌に感染した部分を除去し、根管内を十分に殺菌・洗浄したのち、再び細菌感染を起こさないように防腐剤を充填して根管を封鎖する治療のことを言います。根管は人それぞれ形態や本数が異なり、根の先が分岐していたりと非常に複雑で入り組んだ形をしているため、歯科治療の中でも根管治療は精密さが求められる治療の一つです。
根管治療が必要なケースには、生きている歯髄(神経)が炎症を起こしている場合と、死んでしまった歯髄が腐り、細菌が根管を超えて骨の中まで炎症が進んでしまった場合があります。
いずれの場合も治療方法は大きく変わりませんが、治療期間や治療の成功率は大きく違います。
麻酔をして生きている歯髄を取り除く治療(抜髄)は2~5回程度で終わることが多く、成功率も高いですが、歯髄が死んで骨まで炎症が進んでしまった根管の治療(感染根管治療)は数ヶ月かかることもあり、成功率も低いです。中には難治性と呼ばれる根管治療のみでは治せないケースも存在します。具体的には、石灰化などが原因で根管が閉塞しているケースや、根管にヒビが入っていたり、穴が開いているケースがあります。肉眼で治療を続けることが難しいと判断した場合は歯根端切除術という手術や、やむを得ず抜歯を選択することもございます。
東京医科歯科大学による調査では、日本の保険診療での根管治療の成功率は30%~50%であり、ほとんどが治癒せずにいつか再発し、抜歯に至ることがわかっています。同じ根管治療でも、世界の標準的な学会のデータでは70%~90%の成功率となっており、倍近い治療成績となっています。
この違いの差は、治療にかけられる費用の問題です。世界では良質な根管治療を行うために高額な顕微鏡(マイクロスコープ)を使用し、特別な器具を用いて最良の治療を行います。治療費も数十万円かかりますが、将来にわたり再発しないで健康に保てるならば決して高価ではないという考え方です。それに比べ、日本の保険診療では1回数百円で総額でも数千円です。使える器具も限られ、高額な顕微鏡も導入できません。これは、保険制度が将来にわたって再発しないような良質な治療ではなく、今の症状を治すための最低限度の治療とみなされているからです。根管治療に限らず、歯科治療では同じ治療でも保険と保険外で、将来の状態に雲泥の差が生まれてしまいます。
院長は大学病院で根管治療を専門で学んだ経験はありますが、当クリニックには顕微鏡も備えていないため、あくまで保険診療としての根管治療を一生懸命やることしかできません。
また、顕微鏡さえ使用すれば誰でも良質な根管治療が行えるわけではありません。専門的な知識や熟練した技術が必要なため、もし高額でもいいから良質な治療を望む場合は、信頼できる歯内療法専門医をご紹介させていただきますので、遠慮なくお声がけください。
歯髄には、血管を介して歯に栄養を届ける役目を担っています。虫歯で歯髄が死んだり、根管治療により歯髄を取ってしまった歯は栄養がなくなり脆く折れやすくなるため、通常は詰め物ではなく被せ物で補強します。それでも、歯の状態により歯根が割れてしまい、抜歯になることはあります。一般的には、保険診療で根管治療後の歯の寿命は半分程度に短くなると言われています。
他に、歯の色が暗く変色したり白さに透明度がなくなって目立つようになります。この場合はホワイトニングである程度は改善させることが可能です。
根管治療はまず感染した歯髄や、再治療であれば以前詰めた防腐剤を「ファイル」と呼ばれる針のような特殊な器具を使って取り除き、根管内を空洞にします。そこに薬を入れて仮の蓋をし、時間を置いて根管を消毒。といった流れになります。歯髄を取る時は麻酔をしているため、ここまでの治療で痛みを感じることは少ないです。
ただし、虫歯がひどく進行して「歯髄炎」を起こしている場合など症例によっては、麻酔が効きにくく強い痛みを伴う場合があります。神経が腐って膿が溜まっている状態や、再治療の場合は、麻酔液によって余計炎症が広がり痛み出すことがあるので麻酔をせずに治療しますが、痛みを感じることは少ないです。
続いて、空洞になった根管で汚染された壁を「ファイル」を使って削り、徐々に空洞部分が拡大します。根管は一本の歯に対して複数本あり、前歯では1〜2本、奥歯では3〜4本に分岐しています。分岐した根管をそれぞれ拡大していく必要があるのですが、根管は狭く暗いため根管拡大には高度な技術と時間(回数)が求められます。症状が消えても原因が消えたわけではありません。症状が消えただけですぐに治療を完了すると再発リスクは非常に高まります。
根管の拡大が終わったら、次に根管の充填を施して根管治療は終了です。根管の充填を行う理由は根管に菌が発生するのを防ぐため。広げた根管の穴の大きさを測り、根管にぴったり合う根充材を詰めていきます。このとき根充材でぴったり蓋をしないと隙間に細菌が発生してしまうため、減菌体制の中で慎重な治療が必要となります。
一時的な症状だけであれば、再治療しなければならないわけではありません。
身体には免疫機構があり、細菌の炎症よりも免疫力が勝っていれば軽度の症状は消えることが多いです。逆に、寝不足やストレス、他の炎症部位に免疫細胞が移動している場合は症状が出やすくなります。抗生剤を飲んでしっかり栄養を取って睡眠時間を確保し、「元気」な状態でも症状が続くようでしたら、再治療をお勧めします。
治療中・治療後によって異なります。
細菌に感染していない場合、前歯か奥歯か(歯根の数)にもよりますが通常は2~5回で治療が完了します。感染している場合は、何回というより状態が良くなるまで治療が必要です。
原因は「細菌」です。歯の神経が生きていれば、根管内は無菌状態です。しかし、虫歯菌によって歯質が溶け、歯ブラシ隙間に届かず、お口の中に細菌が多くいると歯髄にまで達します。すると、歯髄が感染炎症を起こし、歯根にトラブルが起こります。
重度の歯周病や、歯に縦のヒビが入っていたり、ほとんど歯が残っていない場合は、歯に被せ物を装着することができません。また、無理に歯内療法を行ったとしても、噛める歯として機能させることが出来ないため、抜歯せざるを得ないというのが実情です。
1回の治療にかかる時間は20~30分とお考えください。
できるだけ治療部位で硬いものを噛むのはお控えください。治療後は虫歯や歯周病の予防をこれまで以上に徹底していただくことが、歯を温存するために一番重要なことです。