予防歯科
予防歯科
予防歯科とは、子ども〜高齢の方まで歯の健康な状態を保ち、お口の中の状況が悪くならないように未然に虫歯や歯周病を防ぐために診療を行うことです。
虫歯や歯周病を予防するために最も必要なことはナレッジ(知識)です。定期健診に通ったり、歯石を除去したり、フッ素を塗ったり、早期発見・早期治療をしても、患者様自身が問題点(生活習慣、飲食習慣、体質、歯ブラシや歯磨剤の使い方)を知り、正しく対処しないことには、新たな病気を予防することは出来ません。
世の中には、癌など本人には予防しようがない病気がありますが、多くの歯科疾患は患者様自身で予防できます。むしろ、歯科医院での治療自体に予防効果はほとんどありません。虫歯の穴を埋めたり、被せ物を作ったり、歯石を除去しても、ホームケアを適切に出来なければ何度でも繰り返します。そういう意味では、歯科衛生士のTBI(歯磨き指導)が最も重要な予防治療といってよいでしょう。
歯科医師が行う歯を削る治療は、確実に歯の寿命を縮めてしまいます。初期虫歯は大きさや位置によっては削らない方が良い場合が多々あります。それでも治療する場合は、そのまま放置するよりも寿命を延ばせるからであり、健康な歯と同じ寿命に伸ばせるわけではありません。大きなデメリットを避けるために小さなデメリットを選択しているだけなのです。
歯科疾患の予防に必要不可欠なのは知識ですが、歯科疾患を悪化させるのは患者様の認識です。歯が痛くなってから受診すればいいという認識、子どもは虫歯になるものという認識、いままで何もなかったからこの先も大丈夫という認識、治療が長くなるのは金儲けのためだという認識、虫歯にならないから歯周病にもならないという認識、グラグラの歯でも残した方がいいという認識。
この「認識」を「知識」に変えることが予防歯科の使命です。
今までに虫歯治療した歯の本数が下記よりも多いと、今後も虫歯になりやすい危険な状態であり、生活習慣、飲食習慣、特に保護者の認識を変える必要があります。
日本では80歳で歯が20本残っている人の割合は50%です。これに対し、予防歯科先進国であるスウェーデンでは80歳で平均25本残っています。年を重ねたら歯を失うなんて常識はスウェーデンにはなさそうです。
虫歯と歯周病は全く別物です。唾液の量や質によって、虫歯になりにくい人は歯周病が進行しやすいです。虫歯にならないから歯科を受診する機会がなく、大人になって初めて受診したら歯周病が進行していることはよくあります。子どものうちから定期健診を受診する習慣が必要です。
虫歯の原因は、①歯、②細菌、③食事の3つと、それらの時間という4つの要素が重なると発生します。このうち、歯磨きで解決できるのは②の細菌だけです。自分にはどの原因の比率が大きいのか、唾液検査で確認して対処することで最も効率的に虫歯予防ができます。
白い歯の上に白い歯垢がどれだけ付着しているか、患者様が分からないように歯科衛生士もわかりません。口の中が赤くなって嫌かもしれませんが、歯垢染色液で染め出すことで初めて磨き残しを知ることができ、適切な指導が行えます。
歯磨きは効率が非常に重要です。毎回5分間も磨く時間はありません。歯ブラシや歯間ブラシ、フロスなどの効率的な清掃器具は、歯並びやブラッシング圧等を考慮する必要があるため患者様によって違いますし、同じ患者様でもお口の状態や歯磨き技術の向上で変わります。最初から上級者用を使っても上手に磨けませんので、その都度最適な器具をご提案致します。
電動歯ブラシの方が手用歯ブラシよりも隅々まで磨けるとは思いません。ただ、手用歯ブラシで隅々まで磨くためには時間がかかります。時間が無く磨き残しが多いなら、最初は割り切って短時間でおおまかに磨いた方が結果的に歯垢除去率が上がることもあります。
高濃度フッ素を歯に塗布することで再石灰化を促進し、虫歯を防ぐことができます。家庭用の歯磨剤にも低濃度のフッ素が含まれていますが、歯磨き後にうがいをしすぎると流れ出てしまい効果が大幅に低下します。歯磨き後は泡を吐き出し、少量の水で1回だけゆすぐようにしてください。フッ化物洗口液を毎日使う方が、たまに高濃度フッ素を塗布するよりも効果的です。
虫歯の好発部位は、歯の噛む面の溝と隣の歯と接触している部分の2か所です。あらかじめ歯の噛む面の溝に樹脂を詰めることで、磨きやすい形態にして虫歯を防ぎます。
歯科医院で行うプロの歯磨きです。歯の表面がつるつるになるので、歯垢や汚れがつきにくくなります。
虫歯の検査、歯周病の検査はもちろん、咬み合わせの診査も行います。また、歯ぐきや粘膜の異変も早期に発見できます。クリーニングも大切ですが、最も大切なのはホームケアの問題点を知ることです。
歯を削って樹脂や金属を詰めた(被せた)場所は、必ず境目ができます。この境目からの新たな虫歯は、健康な歯が虫歯になるのに比べてとても発生しやすいです。保険診療の材料であれば更にリスクは高まります。もともと磨けていない為に虫歯になった場所が、更に虫歯になりやすい状態になるのですから、より一層念入りなケアが必要不可欠です。
虫歯菌が食べ物の糖を分解して酸を出すことで歯を溶かします。キシリトールは菌が分解できない糖なので酸を出さずに、虫歯になりません。しかし、キシリトール100%なのかどうか注意が必要です。少量でも糖が含まれていれば、虫歯が出来る可能性はあります。キシリトールは妊婦でも問題なく食べられますが、妊婦に関係なく食べ過ぎるとお腹が緩くなります。
穴があく前の初期の虫歯は再石灰化で元に戻すことができます。歯磨剤や洗口液などに含まれるフッ素と、唾液中に含まれるリンやカルシウムなどのミネラルが歯と結合して再石灰化します。
フッ素を取り入れても唾液が少ないと効果が低いため、MIペースト等のミネラル剤を併用するか、フッ素とミネラルの両方が配合されたクリンプロシリーズの歯磨剤の使用をお勧めします。
口呼吸は、歯並びの悪化や虫歯リスクの上昇、姿勢の悪化による頸椎や腰椎の痛み、風邪やインフルエンザにかかりやすい、いびきなどの睡眠障害など、不健康な問題を数多く引き起こします。小学生までであれば、当クリニックで矯正治療が出来ますのでご相談ください。
虫歯が進行すればするほど、必要な治療費は高くなります。金属材料費の高騰もあり、保険診療でも安くはありません。歯周病も進行すればするほど治療期間が長くなり、治療費は高くなります。メンテナンスに通うのにも費用はかかりますが、治療費用に比べたら圧倒的に抑えられます。
保険診療は、限られた材料を使い、限られた時間の中で、最善を尽くす治療です。保険外治療は、良質な材料を使い、必要な時間の中で、最良の結果を出す治療です。
歯科疾患のほとんどのケースで保険治療よりも保険外治療の方が歯を失うまでの時間を延ばすことが出来ます。半ば強制的かのような圧力をかけるのは論外ですが、歯科医院で保険外診療を勧めるのは当然なのです。
保険の金属は歯よりも硬い素材のため、咬むたびにわずかに歯の結晶を壊してしまい、再治療の必要性が出てきますし、接着するセメントの品質も保険と保険外では違います。金属アレルギーを引き起こすリスクもあります。プラスチックは歯垢が付着しやすく、唾液を吸収して膨張することで境目に段差ができ、歯垢が溜まりやすくなって再治療の必要性が出てきます。
セラミックの場合、歯に近い硬さであったり、ずっとツルツルしているため歯垢が付きにくく、再治療の可能性は低くなります。見た目の問題だけではないのです。
保証期間も異なり、保険外治療は数年なのに比べ、保険の詰め物は6ヶ月、被せ物は2年と定められています。保険治療はいずれ再治療を行う前提の素材や制度なのです。
再治療のたびに歯を削ることになるので、歯の寿命は短くなります。そうならないためには、保険外治療を選ぶのも一つの手ですが、治療の必要がないように念入りにケアできることが最も経済負担が少なく、健康な状態を維持できるようになります。